pays des fées(ペイデフェ)の2021 AWコレクションが発表された。テーマは、無重力のユートピア。シュールレアリスティックでドリーミーな世界を提案してくれるpays des féesの新作はまさに、どこにもない時空間に連れて行ってくれるようなお洋服たちだ。パステルカラーの優しい水色やピンクが可愛くて、ボリュームのある袖や裾の丸いシルエットが特徴的だ。
ここで表現されている「無重力」が浮遊や逸脱、解放のようなものを指すとして、だったら私たちにかけられている比喩としての重力ってなんだろう。それはきっと、私たちを制限する全てのもので、心に知らん顔をして現実を現実たらしめている決まり事や固定観念のことなのではないだろうか。家に職場がやってきたと捉えるとしんどすぎるリモートワークの日々が続き、旅行も出来ない。ああ、見たことがないものを見たいという気持ちがここに溢れているというのに!忙しい時間、つまらない場所、ありえない他人の発言、張り巡らされた視線、そんな喧騒から離れたどこかにお花畑を作りませんか。私の心は、いつでもこんなにも可愛いのだから。
デザイナーの朝藤りむさんから「私は“服を作っている”というつもりではないんです」と聞いたとき、私がpays des féesのお洋服を見たときの感覚が解き明かされたような気がした。pays des féesが作っているのは、服を着たときに見え方が変わってしまう世界であるとか、現実の隙間あるいは裏側を見るような感覚自体だと思っていたから。服に込められた物語こそが着る人に浸透してくる。そう思うと、今回のこだわりでもある蛾や飛行船やかたつむりが描かれたゴブラン織りの生地や、蛾が散りばめられたプリント、魚のぬいぐるみはどれも、映像のように見えてくる。アートムービーが服という箱に閉じ込められて、着ることで上映されているみたいなのだ。なんてロマンチックなんだろう。
ルックに登場するのは、絵本の中の雲か甘すぎる記憶の中の綿飴、白くふわふわのヘアスタイルの人物だ。風景画のような湖と空を背景にして、足下にはまた雲のようなスモークがある。この場に居るのか、浮遊しているのか、はたまた空の雲から降りてきた妖精なのか、さらになぜ光っているのか、確かなことはわからない。それでもすごく楽しそうで、今自分が見ているものが可愛くて美しいということははっきりとわかる、そんな感覚になる。そして映像の中では、着飾った人々がまたどこにもないような場所で踊っている。私たちに、まだ知らない本当のことを知らせるような誘いをもたらしながら、同時に、誰にも見つかることがないように踊り続ける。誰のためでもなく、自分のために踊っていたいよね。
ところで、私にとって服を着るということは、自分の精神か精神の向かう先に合致するものを選ぶということだなと思う。服はあるがままの心を自由にしてくれたり、自分の進む先を教えてくれたりする。既存の世界で生き抜くことにはあまり興味が湧かない私にとって、可愛い心を大切に生きるためのエスケープを可愛く提案してくれるpays des féesのお洋服は、だからこそ、この世界に必要なのだ。秘められた理想郷――その扉を開くための鍵はお洋服の形をして私たちの元に届けられた。私たちが袖を通した先の未来、きっとたどり着くユートピアがある。服を着ることは、新しい世界を知ってしまうことなのだから。
pays des fees 2021 AW collection
〜ご予約・詳細はこちら〜
Web予約
5月9日(日)まで
https://pays-des-fees.com/?mode=grp&gid=2541084&sort=p
中野ブロードウェイ店受注会
4月2日(金)~4月5日(月)
12:00~17:00
サンプルをご試着頂けます。
〈Profile〉
ゆっきゅん
1995年、岡山県生まれ。青山学院大学文学研究科比較芸術学専攻修了。アイドルデュオ「電影と少年CQ」のメンバーとしてライブを中心に活動しつつ、ソロでも「キネマ旬報」等での執筆や演技など活躍の幅を広げている。
Twitter @guilty_kyun
Instagram @guilty_kyun
〈ブランド概要〉
pays des fées(ペイデフェ)
東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ4階
営業時間:12:00〜16:40
定休日:水曜、木曜日
Twitter @paysdesfees_o
Instagram @paysdesfees_nakano_broadway
文:ゆっきゅん
写真提供:pays des fées
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